(前篇からの続き)
プロジェクトも2年目に入った2022年9月。思いがけないご縁で、LOCAL CRAFT JAPANは、パリで最も美しいと言われるアーケード「ギャラリーヴィヴィエンヌ」にて、リアル展示とイベントを行うチャンスに恵まれました。参加した作り手たちにとっては、海外で自分たちの地域や製品の魅力をプレゼンするというのは初めての経験。そこで、1階で展示即売を行う一方で、2階ではリアルとオンラインを融合し、ものづくりの背景を感じていただける構成にしました。たとえば広島県福山市のデニム「REKROW」は、実物展示のそばで産地とつなぐオンラインツアーを実施。奈良県の吉野林業は、1月のイベントでも好評だった、吉野杉伐採の瞬間の振動を体感できるVRワークショップを開催しました。
その後は観光庁の補助金を活用して、2023年9月に再びパリへ。世界最大の国際見本市のひとつ「メゾン・エ・オブジェ」に出展したほか、トランクデザインと作り手有志の自己負担で、オランダと台湾の展示会にも巡回しました。
こういった活動が功を奏し、「メゾン・エ・オブジェ」が運営する オンライン商談プラットフォームにLOCAL CRAFT JAPANがブランド登録されたり、訪日旅行者を対象にしたメディアに取り上げられたりといった実績が増えていきました。
一方、日本国内では、2023年5月以降、新型コロナ感染症が季節性インフルエンザなど一般的感染症と同じ「5類」に分類されることが決定。海外からの入国者数制限や入国時のワクチン接種・陰性証明といったハードルもなくなり、本格的にインバウンドの波がやってきます。
またLOCAL CRAFT JAPANでは、有松鳴海絞り(愛知県有松・知多)、越前和紙(福井県)、お香(兵庫県淡路島)、絹織物(埼玉県秩父)も新たに仲間入り。それらの動きと呼応するように、僕たちのもとに「日本に行きたい」という申し込みが少しずつ海外から届き始めています(実際の旅行商品の販売は、ライセンスを持つエージェントが行います)。
たとえば木工に関わるアメリカ人カップルは、ハネムーンに吉野行きを希望。彼らは「ジャパン」「ウッドワーク」などのキーワードを検索していてLOCAL CRAFT JAPANのサイトにたどり着いたそうです。また、アムステルダムの展示会で越前漆器を購入されたことをきっかけに、福井県への旅を計画中のオランダ人の方もいます。これまで種まきを行ってきたことが芽を出し始めているという実感があります。
現在、海外富裕層のあいだでは「トラベルデザイナー」という専門職に依頼して、たとえば1ヶ月という長期滞在中に、どこに行って、何を見て、何を体験するかを、移動も含めてコーディネートしてもらうというスタイルが浸透しています。そこでLOCAL CRAFT JAPANでは、海外富裕層を対象としたツアーコーディネートに強い旅行コンサルタントEighty Days Japan社と提携。各地域が練り上げる旅プランに対し、海外視点からのアドバイスをいただくことで、よりゲストのニーズに合致した内容へとブラッシュアップしています。
LOCAL CRAFT JAPANは、これからも続いていく長期プロジェクトであり、めざすのは日本47都道府県を網羅することです。そのため、これからも事務局主導でモノを持って海外にプレゼンに出かけていく動きと、各地域でインバウンドを迎え入れアテンドする動き、その二つを両輪として駆動していきます。
長い歴史とともに、日本各地で先人たちが築き上げたローカルなものづくり文化。その多様性は大変豊かなものです。しかし少子高齢化や後継者不足により、あちこちで技術継承が困難になっているのも事実。そんな中で僕たちは、作り手と出会う旅を国内外の人々に提案することで、地域の魅力を持続可能な形で次世代に残し伝えていく一助になりたいと願っています。